艱難汝を玉にす

 

 シラス漁が始まったが不調のようだ。年明けで2トンくらい国内の池入れと推測される。昨年は12月中旬から浜名湖や静岡県沿岸でかなり漁れたのだが、今のところそれもなく、次の潮周りに期待が集まる。このシラス漁の動きを見て、台湾や中国の活鰻価格が年末から上げ基調となっている。もっとも国産の活鰻よりもキロ当たり1,000円も安値で輸入鰻が売られているということ自体が異常であった。消費者の国産思考で国産の活鰻は高くても加工場の原料として供給され、活鰻市場の大半は輸入物に取って替えられていた。いくら国産思考が強いとはいえ、蒲焼屋さんも資本主義的経営なので利益の追求があり当然と言える。もっともデパートで売られる蒲焼など、国産であることが商品の差別化と評価され高くても売れる僅かな需要を満足させている。

鰻資源の持続的活用を掲げ、少ない資源消費量で済む「高値少量販売」がよしとされる現在、高くても晴れの日に晴れ着を着ておしいただいて食べる美味しい伝統文化として謳われている。しかし、社会の貧富の格差を恨むわけではないが、何年も実質賃金が目減りしたうえに消費税増税があり、円安で輸入物価が軒並みにあがり庶民の暮らしは貧しくなる一方の現実に、晴れの日に奮発してスーパーで冷凍鰻を買い、家族そろってお祝いするということも立派なことであり、誰が批判できるのか。

その為にこそ値段は国産の半分だが、味も原料品質も立派な輸入蒲焼があるとさえ言える。今年は生産減・価格高の基調が続くとみられるが、輸入蒲焼を何としても庶民の味方として活躍し続けるための努力をと願ってやまない。

世に「艱難汝を玉にす」というが、私は新たな試練に直面している。営業の中心的メンバーの退職願いが12月に出された。理由は、この会社の経営が巨額の為替欠損で不安定なものになってしまったことで、自分の人生を預けるわけにはいかないというもの。そうでなくても、絶滅危惧種の鰻を貿易するというビジネスモデルが風前の灯火になっている訳だから、当然のことである。頭でわかってしまうと慰留の言葉も出ず、こんな会社にしてしまった社長として、改めて社員に不安と迷惑をかけたことをお詫びするしかないという気持ちが先に立ってしまう。

あと1~2年で債務超過解消の出口が見えてきた時だけに、私としては落胆は隠しようがないが、ここが踏ん張りどころと覚悟を決めて、再び前進するのみと考えている。生涯学習あるのみという姿勢からすれば、この困難も「はい!喜んで」と引き受けるべきことなのだろう。

2016年1月
代表取締役  森山  喬司